Press Turn

ジャーナリズム論的あるいは私生活的な転回について

1月6、7日

precommitment

旅を続けるオデュッセウスたちは、船乗りを惑わすセイレーンのいる海域に入る。オデュッセウスは船乗りたちの耳を蜜蝋で塞ぎ、自分自身は帆柱にきつく縛り付けさせ、「自分が『縄を解け』といったらよりきつく縛るように」と命じ、海域を抜けることができた。

 

6日の紙面に内田樹さんが出てた。

「一時的な大衆的熱狂で議席を占有した政党が国の根幹に関わる制度や原理を簡単に変えることができないように、憲法があり…」と言ってる。

digital.asahi.com

 

安部首相は夏の参院選で本気で憲法改正を狙いにいく、という見方がが広まっている。国会議員の3分の2の賛成で発議しなきゃいけないので(96条)、参院選でがんばる、と。憲法改正のハードルが高いのは内田が指摘するような憲法の知恵だということになっているが、これは確か、precommitmentとよばれているはずで、憲法を時の政府の一時的な熱狂で変えられないように、あらかじめ憲法制定者が仕組んだ仕掛けである。 

 

平和憲法を制定した時、憲法改正を熟議や合意によってではなく、数と熱狂によって行おうとする人がいつの日か登場するかもしれないと思ったのだろう。アメリカの場合はそこをfounding fathersとロマンティックにいってしまえるのが羨ましいところだが、日本の場合は、そこもmade in occupied japanなのでちょっと複雑な心境になるのかもしれない。が、そのprecommitment が役に立っていることは間違いない。